私が電子書籍の執筆依頼を断った理由

二ヶ月前くらいのことだったか、ある方から電子書籍の原稿執筆依頼があった。なんでも親しくしている個人ニュースサイト管理人が、私を推薦してくれたらしい。ありがたい話だ。

しかし少し考えた結果、私はお断りすることにした。

時間が取れない

原稿の締め切りまで二ヶ月くらいあったのだけども、電子書籍として発行されるだけのまとまった分量(原稿用紙にして50~100枚程度らしい)を書くだけの時間が取れないと感じた。ブログの記事を書くのと違い、何度も推敲をしなければならない。「ここがちょっと違ったから」と新たな記事を書いたりして訂正するわけには行かないので、じっくり腰をすえて書く必要がありそうだ。ブログに関してテキトーイズムを貫いている私としては、ちょっと荷が重い。それに元々私は筆不精なのだ。

自分の文章をお金を払って読む気がしない

電子書籍出版ということは、読者にお金を支払ってもらうということなんだろう。書籍の価格は明示されなかったけど、その方に紹介された電子書籍の販売ウェブサイトを見ると、どうやら300円から800円くらいの物らしい。書かれている分量を考えると、決して高い物ではない…… むしろ「紙の本」と比較して安いとは思うものの、果たして私の文章にそれだけの価値があるのか?

いや「私の文章」というのは謙遜に過ぎるので、はっきり書くけど、私は一部のネットユーザー間で支持されているような「ネットで見かける有名人」の文章でも、自分自身が「前金を払ってまでは読まない」と思っているのだ。

ブログの記事で面白かった・役に立ったと思えば、そのブログにあるアマゾンアソシエイトのリンクを踏んで本やCDを購入したりすることはあるけれど、「ブログの記事を読む」ことについてお金の負担をしているわけじゃない。

だいたい、私のブログは多少の意見の変遷はあるとは言え、基本的に「またその話かっ!」というくらいに似たような内容のオンパレードだ。仮に電子書籍の原稿依頼を受けたとしても、たいして目新しい文章が読めるわけでもなく、ウェブサイト運営に関する記事をまとめただけのものにしかならない。「300円も出したのに、普段ブログで書いていることと何も変わらないじゃないか! 金返せ、こんちくしょーっ!」と罵られるのはイヤなのだ。


それでも「いやぁ、ekkenさん、そんな事はない、謙遜しすぎですよ! 私ならアナタの電子書籍、500円払ってでも買いますよ!」などと言ってくれる人がいるのだとしたら。

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そもそも「電子書籍」に対する関心が低い

意外かも知れないけれど、ネットで話題になりやすいモバイルタイプのガジェットって、あんまり関心が無い。ノートパソコンも持った事がないし、スマートフォンをほしいとも思わない。仕事上ケータイは持っているけれども、自分用ではなく会社の物。プライベートで必要な物とは思っていない。

電子書籍は、本棚が要らない・全文検索ができるなど、非常に便利だと思うものの。

最近は書籍の所有欲が減少し、図書館で借りてくる事が多いし、全文検索が必要な機会なんてそうそうあるものとも思えず。

ただでくれるのなら、もらってやらないわけではないぞ! とえらそうな態度をとってみる。

もっとも、ビンゴ大会か何かでもらったとしても、すぐに飽きちゃってゲームボーイなどが乱雑にしまってある戸棚の引き出しに追いやられそうな予感が。

名も無き個人が情報発信する場としてはブログで十分

先述の「自分の文章をお金を払って読む気がしない」とかぶるのだけども。

2004年前後に無料のブログサービスが乱立し、誰でも簡単にネット上で情報発信可能になった。私は学生時代、創作系文系サークルに入っていて、いわゆる同人誌に文章(主にショートショート)を掲載していた。500円くらいだったか、月会費を払って、編集部に原稿を送付すると、手書きで清書されてオフセット印刷、製本された同人誌が送られてきた。このサークルは、後に私自身が編集部側になり、運営方法について意見対立が発生して退会したのだけども、知らない誰かに自分の文章を読んでもらえて、時々感想をもらえるというのは実に楽しかった。

最大規模時で40人前後が在籍したいたのだけども、ブログというネットツールを使えば、この同人文系サークルとは比べ物にならないくらいの感想を得る事が可能だ。私にとってのブログは、この文系サークルを巨大化したようなもので、誰でにでも気軽に読めて、気軽に意見を言える場である事が望ましいと思っている。

読むことに対して金銭の授受が発生すると、そこで読まれるためのハードルができてしまう。私のように「北海道に住んでいる、建設業界に関わる会社に勤務する、インターネットと読書とゲームが好きな名も無きオッサン」が書いたような文章は、書いた側が望まない限り、そうしたハードルは不要だと思う。多くの人に読まれることに喜びを感じているのに、お金を出した読者に限定して書く必要性を感じない。

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電子書籍の企画が大事

今回の私への執筆依頼は、私個人に対する物だった。もしかしたら同じような依頼を他の人にもしているのかもしれないけれど、その企画を電子書籍で出版するという意味を感じなかった。

私の書くものは、おそらくはこれまでのこのブログの内容と大部分が重複するだろうから、あえて電子書籍として発行される理由が見出せないのだ。

原稿執筆に対する報酬は売上の○%ということで、正直(そこそこ売れれば)魅力的な数字ではあるものの。これって要するに成功報酬で、もし仮に1冊も売れなかった場合、書いた人の報酬はゼロ。これの何がいけないのかと言うと、電子書籍企画側にとってのリスクが低すぎることだ。

もし私が執筆依頼を受けたとしたら、原稿内容のチェックとか、その後の打合せといった作業が必要になってくるとは思うのだけども、リスクが少ない分、商売に真剣みを感じない。リスクが少ないから私のようなフツーのオッサンに声をかけてきたのかもしれないけれども、フツーのオッサンの文章ならば、その人のブログ上で読めるわけで。

一人のブロガーによるものではなく、複数のブロガーによる対談形式の読み物とか、同一テーマのアンソロジー的読み物等の工夫があれば、個人のブログでは読めない企画として購入意欲が湧くかもしれない。企画側の編集の手間などが増えることからある程度のリスクは覚悟する必要があるけれども、素人の書いた「もともとタダで読める文章」で商売をしようと思うのなら、普通のブログでは読めない一工夫が必要だと思う。

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