- 2009-10-20 Tue
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以前は頻繁に「ウェブ上の匿名」に関するエントリをアップしていたのだけど、このところ少なくなったのはいい加減新たな意見が出尽くされたためか。→このブログの「匿名」タグをつけたエントリ。
最近、弁護士の小倉秀夫さんが匿名に関するエントリを続けて書いていたのだけど、主張の「部分」には同意できるのに、全体的に違和感を覚えるのはなぜなんだろう?
ネットでの匿名発言の価値を貶めているのは,発言の匿名性を濫用して私的制裁等に利用している人たちと,それを黙認し容認しているネットサービス提供者です。だから,ネットでの発言の匿名性を守ろうと思ったら,むしろ,ネットサービス提供者に対し,匿名性の濫用を規制しまたはその濫用により第三者に生じた損失を補償するシステムを採用するように突き上げを行うべきなのです。
この部分については概ね同意です。
「匿名性の濫用により第三者に生じた損失」に対しては、現時点でも何らかの形で補償される(または補償を求められる)システムになっていると思うのだけど、サービスによっては対応がズボラだったりするらしいので、きちんと対応しないところに対しては公的権力を発動できるようになれば良いですね。
匿名による加害者に対して、被害者が泣き寝入りすることが多いのは、被害の大きさと比較して訴え出るコストの高さ(時間的・金銭的)が大きな要因になっていると思います。なので、小倉さんのような正義感の強い弁護士が主体になって、無料奉仕でバックアップしつつ、政府に訴えかけると良いと思いますよっ!
お金の支援は出来ませんが、がんばれコール送っちゃいます!
いわゆる「ブログの炎上」をいくつか見てきましたが、匿名者の中にはエキサイトしすぎて、相手が明かしていない個人情報や、脅迫めいたコメントを書き残す者も存在するので、こうした「発言の匿名性を利用した私的制裁」には厳罰で対処するのが良いのかなぁ。ということで、上記引用部分については小倉さんに同意です。
……が、後に続く部分を読むと、必ずしも小倉さんの主張に同意できなくなっちゃう。
しかし,ほとんどの匿名性擁護論者は,ほぼ一様に,被害者にその被害を甘受することを求めるのみです。
この部分について具体的な例示がなされていないので、小倉さんと私の観察範囲の差異によるものなのかもしれませんが、私は「匿名性擁護論者」(この場合、小倉さんの定義に従って「実名でない名前を利用する人・またはそれを擁護する人」とします)が‘匿名による私的制裁’の被害者に甘受することを求めているのを見た記憶がありません。
私的制裁について「ネットに公開している以上、攻撃されて当たり前」なんて言っているバカはどこにいるのでしょう?
いや、そうした人は存在するのかもしれませんが、少なくとも小倉さんと意見をやり取りしているブロガーの中では、その確認が不能です。(繰り返しますが、観測範囲の違いによるものかもしれませんので、具体的事例があれば提示していただけると幸いです)
私の個人的な感覚だと、よく見かける「匿名性擁護論者」は、こうした私的制裁について嫌悪感を持っているような。
但し、ネット発言の匿名性を濫用した「私的制裁」について、小倉さんと私との間で、その認識に誤差があるのなら話が変わってきます。
私が考える「匿名性を濫用した私的制裁」は次のとおり。
- 過度な罵倒や中傷書き込み
- 相手が公開していない個人情報を何らかの方法で調べ上げ、それを書き連ねる行為
- 相手の意見や態度が気に入らない事を理由に、相手またはその周囲に暴力を仄めかす行為
- これらの書き込みをすることを、多くの他者に要請する行為
深く考えればもっとありそうですが、大体上記四つに集約されるのではないかと思います。
しかし、上の四つは(少なくとも私の観測範囲では)「やってはいけない行為」として、かなりコンセンサスが得られているんじゃないかなぁ。
一方で、匿名での言動を批判する人の中には、次のようなものを「匿名性を濫用した私的制裁」と考えている人も。
- 記事に書かれた誤字や事実誤認の指摘
- 曖昧に書かれたものに対する事実の確認
- 反対意見の表明
- 嫌悪感の意思表示
こうしたものを激しく嫌悪して、荒らし扱いする人をたまに見かけるのだけど……
もちろんこれらの書き込みも、その表現に過剰に悪口が含まれていれば「匿名性を濫用した私的制裁」と受け取られても仕方がないと思いますが、過度に匿名コメントを嫌悪する人の中には、自分がこの手のコメントをする際には悪口を含めているのに、自分になされたそれにはひどく敏感になってしまう人が多いと感じます。あ、「そんな人どこにいるんですか? ekkenの藁人形じゃないですか?」という反論があると面倒くさいので、とりあえず池田信夫さんの名前を挙げておきますね。
ネット上で誹謗中傷されたとか、著しい精神的被害を受けたとか騒いでいる事例はよく見かけるのだけど、利害関係のない時に傍から見ていると「おまいらなんでそんなに大騒ぎしているのかワカランっ!」ということが少なくないです。その大部分が「オマエノカーチャンデーベーソ」レベルのケンカで、当事者同士で解決できそうなもの。そしてそうした問題は「匿名だから」起こっているわけではなく、実名者同士でも頻繁に起きているのではないでしょうか。
もちろん法的問題になりうるものについては、それを看過する必要はないと思うものの、あまりに些細なトラブルに対して、ウェブサービスサイドが簡単に個人情報を開示しちゃうと、被害者を装った悪意ある人の思う壺ですよね。
悪意まで無くとも、こうした揉め事においては被害者を自称する人の棚上げ問題が大きいものでして、はたしていちいち公的な第三者が立ち入る問題なのか、と。
……アレ?
もしかして小倉さん、ネット上のくだらないトラブルを法的問題に発展させることで、自分の仕事を増やそうなんてしてることはないですよね?
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- Trackback from in respect for Dr.Philip Kotler 2010-02-05 Fri 22:34
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ブログを書いていると、様々な人からコメントをもらう事があります。 多くは古くからの友人であったり、同じ早稲田大学ビジネススクールの同期であったりと知っている人からであるのですが、 たまたまブログを読んだと思われる社会人大学院を目指している方、国内MBAに興?... (more…)